プライベートバンキング(みずほ銀行)


ニッキン平成16年7月16日号の記事です。みずほ銀行がリテールバンキング・ビジネスの営業を預かり資産1千万円以上の富裕層に特化するということです。記事によれば、預かり資産1千万円以上の顧客層が同行の預かり資産に占める比率は45%ですが、投信などリスク性商品の残高シェアでは80%だそうです。総顧客数に占める該当顧客数の比率は公表されていませんが、5%〜10%の間でしょう。総顧客数(口座数ではなく)を2千万として、100〜200万人が対象です。それも大半が東京・大阪などの大都市圏に在住していることでしょう。これらの顧客の多くは、みずほ銀行以外にも高額な資産を預けていると考えられます。PBがビジネスとして確立していない日本の金融マーケットで、シティなどの外資系や三菱東京、三井住友との競合を通じて、PBの成功則を試行錯誤していくことになるのでしょう。

みずほ銀行のPBは大きく8つのサービス・ラインから構成されています。それは、コマーシャルバンキング、証券、投資顧問、海外資産運用管理、信託、不動産、保険・リース等、インベストメント・バンキングです。最後のインベストメント・バンキングは、IPO・M&A・MBOなどを使った会社所有者向け資本政策支援です。これらのサービスを使って、ポートフォリオ・マネジメント、ライフプラニング、リスク・マネジメント、資産運用、資金調達、資産・事業承継、資産管理、資本政策などの顧客支援をする考え方です。

しかしながら、預け資産1千万円程度で、これらサービスを展開できる訳はありませんから、みずほ銀行としては、自行顧客にアプローチして、他行への預け資産をシフトさせる必要があります。つまり、今回の新営業体制は、他行資産取り込みを目指したものになる筈です。具体的には、コンシェルジェ、コンサルティング・カウンターの設置、インベスターズ証券との双方向通信設備、フィナンシャルコンサルタント資格認定制度、マイレージクラブなどが予定されています。独創的なものではありません。とは言え、この種のビジネスは奇抜性よりも、着実な継続推進とブランド確立が第一ですので、止むを得ないと考えます。

一方で、マスリテール向けの既存施策は見直しされ、場合によっては中止されるものもあるようです。例えば世帯管理は撤廃するそうです。つまり個人顧客向けRMは、富裕層(1千万ですから、富裕とは言えないかも知れませんが)のみを対象とすることになります。UFJ24のようなサービスに賛否両論がある中で、みずほ銀行がこうした判断を下すのは興味深いですし、筆者には妥当なように思えます。ある意味、資産のない間や利便性だけを求める顧客は「あちらへどうぞ」であり、金が貯まったら「こちらへどうぞ」という戦略です。東京三菱などのPBは、その境目がもっと高いということです。みずほ銀行は、自行預け資産1千万以上の顧客が保有する全資産を調査・推計して、このラインを引いたのでしょう。

従来の金融取引は、薄利多売が前提なので、長期継続取引が収益の源泉と考えられていました。しかし、アンバンドリング化・水平構造化が進むに従って、複合取引が収益性のCSFとなります。薄利多売ビジネスは、極めて限定された少数の業者による寡占化が進みます。郵貯はこの分野で残るでしょう。IT戦略としては、同時に両方を推進できませんので、どちらを選択するかという経営判断が前提となります。

この考えをITに展開すると、PB専用システムというコンセプトが出てきます。PBを総合金融資産運用管理支援と捉えるのか、ファミリー・オフィスとして捉えるのかによって、必要な機能範囲が異なります。当然、マスリテール用に作られる低料金のコモディティ・サービスとは大分違った機能や装備が必要となります。適当なITソリューションがないかと以前から調べているのですが、国産の製品はありません。欧米製のものが2、3あり、海外では結構使われているようです。欧米には、金融用のアプリ・パッケージを独立系ソフト会社が開発できる土壌があります。日本で使うには、税制対応などのジャパナイズが必要となりますが、そのことをマイナスと捉えるよりも、他行への差別化・先行メリット享受の良い機会と考えるべきでしょう。

銀行次期システムをアプリケーション・アーキテクチュアから考える場合に、従来とは大きく異なった視点が必要になりつつあります。メガバンクの新しい営業戦略が出てくるに従って、銀行の次期システムのコンセプトが固まっていくでしょう。オープン系だとか、コンポネント化だとかの技術ドリブンだけでは、次期システムを計画することは出来ません。大手ITベンダーにとって、PBシステムの市場規模は極めて小さいので、採算の取れるビジネス或いは既存の大組織を維持できるビジネスにはならないでしょう。