P2P融資オークション(英国のZopa)


昨年3月にスタートした個人間の融資をオークション方式で仲介するサービス「Zopa」(Zone of Possible Agreement)が日本でも注目されだしたようです。6万人近くの会員を集めて成功しつつあることと、今年に入って米国カリフォルニアでも「PROSPER」という同様のサービスが開始されたからでしょう。

日経金融の平成18年5月8日号でCFOアレクサンダー氏とのインタビュー記事を掲載していました。Zopaはネット専業銀行エッグを立ち上げたR.デュバル氏とアレクサンダー氏が、個人の投資と小口資金調達をマッチングさせるミクロ融資を目指して開設したオークション・サイトです。

筆者は20年程前に、企業向けに私募債をネット・オークションで提供するサービスを提唱したことがあります。金融関係の皆さんは「理屈上はありえるが、金融はそんな簡単なモノではないよ。」という顔つきで、何の反応も見せてくれませんでした。Zopaは不特定少数のB2Bではなく、不特定多数のP2Pですから、数段仕組みが難しいと思います。昨年、この話を聞いた時は面白い試みだと思った程度でしたが。

仕組みはこうです。

@    資金の貸し手借り手を問わず、まずZopaの会員(フリーフォーマー)になります。条件は、英国在住で銀行口座を持つ18才以上の個人。そして、信用調査会社エクィファックス(米国)から信用格付けを得ます。

A    借り手の格付けや返済期間によってオークション市場が分類され、金利幅が設定される。

B    貸し手は、融資残高25千ポンドを上限として、借り手一人当り200ポンドを限度として融資する。借り手は複数の貸し手を見つける必要があるが、双方ともにリスク分散が可能となる。 

C    借り手は、融資希望額の1%を手数料としてZopaに支払って、自分の該当する市場で融資のビッドをかける。その際、氏名住所は公開されないが、性別、年齢、資金使途、貸し手へのメッセージ等を表示する。該当する市場の金利等融資条件の範囲内で、より良い条件の貸し手(複数)を待つ。

D    資金の授受はZopaの銀行口座経由で行ない。返済管理、延滞管理、回収業務はZopaが行なう。その為の債権回収会社もある。ZopaはFSAの認可だけでなく、消費者金融業の免許も公正取引庁から取得している。しかし、実際の不履行率は0.05%未満という。

貸し手にとってはローリスクでありながら高利回りが期待でき、しかも、自分の意思で融資対象を選定できることが長所だとされています。借り手にとっては、銀行からは貸してもらえないような融資を、比較的低金利(大手商業銀行の年利8〜9%に対し5〜7%)で簡単に借りることができます。ネットと大数の法則を活用した、消費者ローン仲介ビジネスだと言えるでしょう。銀行が、オートスコアリングなどと称して、統計データのみで行なう消費者ローンに傾くほど、このサービスの利点は浮かび上がってきます。要は延滞率を銀行より低くすれば良いのですから難しい話ではありません。日本では、大手消費者信用専業会社で3%未満の貸し倒れ率ですが、銀行はその倍以上もあります。

こうした仕組みは情報技術としては難しいものではありません。主宰者の信用が第一ですが、ビジネス・モデルと許認可がポイントとなります。日本で行なうとすれば、どのような規制にかかわるでしょう?n:mの金銭貸借を仲介するだけですが、複数貸し手資金が一度Zopaの口座を経由して、複数の借り手に分散されます。これが出資法の対象となるのか、単なる資金移動の代行処理なのか?貸し手から委託された貸金業務となるのか?貸金業登録は簡単なのでどうにでもなりますが、銀行業務となると面倒です。どこかの銀行に口座を借りて、そこで資金の集配分をした方が手軽でしょう。イーバンクなどが便利な仕組みを用意してくれるかもしれません。貸し金回収は、弁護士かサービサーでなくては不可能です。しかし、アウトソースすれば済みます。その費用は対象額の1%未満でしょう。

P2Pの融資オークションも面白いですが、経済全体に与えるマグニチュードからすれば軽いものです。中小零細企業の5千社も全国の各業種から集めれば、似たようなビジネス・モデルが可能です。大騒ぎして中小企業融資特化型の銀行を作るよりは、はるかに簡単で合理的だと思います。このようなアイディアが生まれ、受け入れられる土壌のある国と、そうでない国とでは、ITによるイノベーションにも大きな差が出ます。規制の存在が悪いのか、規制の運用が悪いのか、規制に頼る業界や顧客が悪いのか?XX特区などと市場を限定したのでは、ネット・ビジネスは成立しません。希望があるとすれば、かつて眠れる獅子と言われたイギリスでも、20年もあれば変われたということでしょうか。