ラップ口座(三菱UFJ信託のSMAサービス)


金融経済新聞平成18年5月22日号の記事です。三菱UFJ信託(MUTB)とみずほ銀行が、今月からラップ口座の取扱いを開始したということです。MUTBの資産運用口座「番頭さん」は信託業界初のラップ口座です。みずほは、新光証券のラップを証券仲介するということで、自社商品ではありません。コンサルティング業務部PB室でのみ取扱うそうです。

証券のラップは、一定の手数料と引換えに投資アドバイスや口座管理、そして売買仲介手数料などを全て包むということで顧客メリットがはっきりします。その点、信託では売買手数料は投信程度で、株や商品取引などは扱っていません。どうやって判り易い顧客メリットを打ち出すのでしょうか?グループ証券と提携すれば可能でしょうが、そうではないようです。

大和証券が平成16年末にラップを開始し、その後すぐに新光証券が参入しました。日興コーディアルが続いて野村が参入したのが昨年の9月です。各社ともに出足はユックリでしたが、最近の株式市場好調を受けて急速に扱い額が増えているようです。大和が1800億円、日興が1600億円、新光が860億円程度の預かり残高となっています。(今年4月末)コンサルティングと手数料のバンドル割引を通じて優良顧客との親密度を増すことが目的の商品です。顧客数と契約金額、ラップ手数料によって得られる金融機関側メリットと情報提供、売買手数料割引という顧客側メリットのバランスが営業戦略の成否となります。野村の最低契約額3億円と日興の1千万円とで、どちらが勝つかが、このバランスの判断材料になるでしょう。

MUTBのラップ(SMA)は、3千万円から百万円単位です。投資対象は国内公募の投信だけです。安定成長型から積極拡張型の5種類の投資スタイルを顧客が選び、それに合わせたアドバイスと投資セレクションを提供するということです。手数料は、投資顧問料と残高手数料で、売買手数料は不要としています。手数料テーブルは公表されていませんが、他の資産運用口座の料金が売買手数料別で、預り資産時価評価の0.8から1.5%程度ですから、2%以上なのでしょう。

ノーロード型投信が増えていることを考えると、顧客にとって手数料面のメリットはなさそうです。

謳い文句は、S&Pを投資助言者とすることです。企業格付けや株価指数・投信分析情報などを活用できるそうです。むしろ、複数の投信で顧客にあったポートフォリオを組めることがメリットだと思いますが、判り易さには欠けます。同行のヒット商品「エクセレント・クラブ」と組み合せたら面白そうですが。狙う顧客層は、「投資方針は自分で決めるが、運用管理等は専門家に任せて安定した運用をしたい。そして、運用状況を適確に説明して欲しい。」という層だそうです。かなり保守的な顧客層だと言えます。そういう顧客は、運用委託先を余り変えません。MUTBは、自行顧客の中から番頭さんの利用者を集めるのでしょう。ということは、手数料を余り割引くことはできません。

どの金融機関も、アドバイスやコンサルティングを強調します。筆者は余り当てにしません。理由は、「そんなに当るなら、何故競馬の予想屋をやっているの?」という疑問と同じです。儲かる投資を教えてくれれば、成功報酬で分け前を払う気はありますが。ネット証券をやる人々でも、高い手数料を払って対面営業の取引を続ける人が多勢います。それは、余り知られていない情報を提供してくれるからです。つまり、情報には確実性だけでなく希少性に価値があります。税法やポートフォリオの組み方なども必要な情報ですが、その情報源はたくさんあります。

信託銀行の価値は、資産管理能力でしょう。それに運用能力を付加すれば最強の金融機関になれます。運用は助言と執行とに分けられます。証券関連商品では、信託は証券会社に執行力で劣ることはやむをえません。助言が大事となりますが、そこにS&Pを持ってきました。S&Pは、格付けと情報販売が商売です。その情報は確実性が高くても、機密情報か希少性に欠けます。公表前の情報を使えるなら別ですが。

ラップ(SMA)は典型的なバンドル商品です。そのコンポネントは、一つ一つが一流である必要があります。その結果、アンバンドルされた商品・サービスが出てきます。バンドルするのは顧客自身か、その委託を受けた助言プロということになります。我々は、金融商品やサービスをとことん分解して、ベストな組み合せを追求します。それをサポートするのが資産運用コンサルタントでしょう。

こうした時代に、どのようなITコンポネントとインフラが必要となるのか?それを考えているベンダーや金融機関はないようです。中小ITベンダーにも事業機会があります。これからの数年は、相変らず派遣ビジネスで手一杯でしょうが、次のステージに向けた調査研究だけはしておくべきでしょう。