りそな銀が日本IBMなどと新会社、地銀のスマホ金融支援


日経新聞の令和3年7月14日付け記事です。りそながIBMやNTTデータと新会社を設立し、共同でスマホ金融サービスを開発して地銀やフィンテック企業に有料で提供する事業を始めるという内容です。BaaSを新収益の柱にする動きがふくおかグループなどに見られますが、BaaSのようにクラウド前提ではなく、サブシステムとしての提供を考えているようです。その方が銀行には馴染み易い。

りそなは、今年3月から、めぶきFGの常陽銀、足利銀に店頭セルフ端末を通じたバンキングアプリ基盤を提供しています。同グループは以前から顧客サービスのデジタル化を積極的に進めており、そのUI/UXは使い易さで利用者から高く評価され、バンキングアプリのダウンロード数は400万だそうです。筆者も時々りそなの店頭に行きますが、そのスマートさは他行と比べて数段先行しています。東京ではリテールの来店顧客が少なく、「これでは合理化の必要もないのでは?」などとも思いますが。ただ、埼玉りそななど近郊店では威力を発揮しているのかも知れません。めぶき2行は三菱UFJ勘定系ソフトの共同利用参加行でIBMの典型的なインフラを利用しています。りそなのインフラもIBMなので、親和性が高いこともめぶきが採用する背景にあるのでしょう。

りそな基幹系オンラインの大元は大和銀行のシステムですが、合併の後、大幅に改良追加しています。国からの出資を受けた際に大幅な経費削減を急ぐ必要があり、IT費用も例外ではありませんでした。IBMなどベンダーに大幅なコスト削減策を求めたのですが、その際にNTTデータが魅力的な提案をしたことで、それまでIBMにフルアウトソーシングしていたのをNTTデータに変更しました。ですから、今はNTTデータと日本IBMがITの戦略的パートナーです。その構図をそのままスマホ・アプリ関係に取り込んだのでしょう。

今年1月に、大和銀行の時代にIBMと設立したIT開発子会社ディアンドアイ情報システムへの出資比率15%から49%に引き上げ、社名を「りそなデジタル・アイ」を変えました。DX人材の育成を含めて、グループのDX戦略を加速させることが目的です。IBMがまだ51%を出資しますが、りそな側の意向を充分に反映できる出資構成になったということでしょう。内製化の一貫と捉えることもできそうです。であれば、デジタル・アイにNTTデータを加えて15%でも出資を受けて、IBMの出資比率を36%にすれば良いのでは?と思うのですが、そうしないのは、今回の新会社がスマホ・アプリを地銀やフィンテックに販売するという点で基幹系中心のシステムとは別建てにしたのかと思います。ただ、日本IBMやNTTデータのスマホ関連技術力には疑問が残ります。更に両社の個人向けサービスの開発力は歴史的に疑問というよりは強い懸念を持つのですが、その辺りはフィンテック企業などを活用すれば良いのかもしれません。

2019年の夏に米IBMがオープンソースのトップ企業レッドハットを買収しました。IBMが余計なことをしてと思ったのですが、IBMはレッドハットの経営そのものには口出しせずに、同社の強みを活用することに専念しているようです。IBMは世界的にオープン化戦略を打ち出しており、提携戦略においても昔のようなクローズな動きは全くなくなりました。最近では長年の敵としてきた競合先との協業にも積極的です。すると面白いことに、協業先が急速に増えて、事業変換と再生の流れが見えてきました。時代はまさにオープン化なのだと痛感します。その点で日本企業、特に金融機関はオープン化というとオープン系サーバーを入れることと思っているかに見えます。とんでもないことです。

めぶき2行がりそなのバンキングアプリを採用したと書きましたが、両行は三菱UFJグループの親密地銀筆頭格です。このニュースにもよくMUFGが認めたと思ったのですが、両行はMUBKとリテール中心の地銀の店頭DX化の違いと、りそなバンキングアプリの優位点をMUFGに説明しきったのでしょう。やがて、MUBKも個人向けUX/UIの改良に参考とすることでしょう。

こうした流れに中小ベンダーやフィンテック企業などが集まってきます。するとエコシステムが自然発生的に作られてきます。いろいろなDX戦略をみていると、どこもオープン化とエコシステムを標榜します。しかし、参加企業は自社メリットばかりに目を向けて、自らのパワーを提供するという視点が弱い。それではエコシステムはできません。オープンソースの開発や評価検証、保守、そして導入支援、教育など一連の機能をレッドハットは見事に体系化しています。ですから、小さな売上と社員数にも関わらず、大きな収益が実現できる。これからは、こうしたビジネスモデルで活躍できる。皆がGAFAのようになれる訳がありません。日本のIT企業や銀行は、レッドハットやりそなのビジネスモデルを深く理解して自社の事業戦略に反映させたら良いと思う次第です。

 

                               (令和3年7月15日 島田 直貴)