エクセルのお化け (ターボデータラボラトリー社のDayDa.Laboo)


欧米系基幹ソフトに席捲されているソフトウエア業界で、世界に通用する日本製ソフトが待望されて久しいものがあります。

最近、ミドルウェア、特にデータベース・エンジン関連で興味深い製品が日本で続出しています。

先頃、横浜で行われたITベンチャー・コンソ−シアムの内覧会に出席しました。実は、是非とも見てみたいソフトがあったのです。いわゆる超高速データベース・エンジンと称される製品(というよりは技術)です。

ターボデータラボラトリー社(TDL社)のDayDa.Laboo(D2L)は、WindowsベースのPCサーバーで、UnixベースRDBとのベンチマークで500から700倍、汎用機RDBとでは40から90倍という処理速度を実現しています。セル単位の処理で、9900万行のソート、検索を10秒以内、20億行のJOINテーブル・ソートを1秒以下で実行してしまいます。実演をみていますと、その速さに唖然とするよりも、何故か笑い出してしまう速さです。と言いますのは、多くのエンドユーザーが、千件前後のエクセル・データの簡単な計算に、数十分も待たされて、いらいらしているのを良く見かけているからです。あれは一体何だったのかと思って、つい笑ってしまうのです。そこで、私は勝手に「エクセルのお化け」と渾名づけしてしまいました。TDL社には失礼ですが。

金融の世界で見ても、DBの必要性に変わりはないのですが、それをRDBにした途端に、幾重ものサブファイルが出来て、それをトランザクションが渡り歩きます。エクセルなどは、その権化みたいなもので、メモリーは食うは、ファイルIOは多いはで、折角のユーザビリティを遅い応答時間が台無しにしています。ハードで解決しようと、Unixや汎用機の世界に入り込むと、途端にITガバナンスがエンドユーザーを離れて、システム専門家と言われる、融通の効かない人達に奪われてしまいます。D2Lのようなツールが普及したら、ハードベンダーも、ソフト会社も売り上げ維持は不可能でしょう。つまり、この種のツールは、無視されるのがこれまでの常でした。IT部門は、全体の技術的整合性や保守の確実性を理由として、これらツールの採用に抵抗するでしょう。その論拠は間違いではありませんが、コーポレート・テクニカル・アーキテクチャさえ、きちんと整理しておけば何の問題もない使い方が発見できるはずです。

D2Lの超高速処理を可能にする技術的根拠はいくつかあります。

第一に、Liner Filter Methodという情報一方通行化、新しい演算ロジック、列基準の部分集合による大規模DBの内部構造処理化です。

第二に、Filter Array Structureというアルゴリズムによって、フイールド単位の物理構造化と、データアクセスにおけるインデックスを使わない技法によって高速転送を可能にしています。

結果として、データ処理の最も遅い部分を排除し、HDDではなくメインメモリーの性能を活用し、インタラクティブな処理を実現したということです。

この技術を、ミッション・クリティカル業務に適用するには、オンメモリーということでの障害時の脆弱性、既存DBとのデータ構造整合性、複数ユーザー環境での機能不足などの制約があります。また、Winベースということで、MS社のサポート継続性の問題も含んでいます。しかしながら、従来の製品に比べて、数段低コストで利用できますし、全体アーキテクチャへの明確な位置付けを行なえば、強力なアプリケーション・ツールになることは間違いありません。例えば、年金や給与計算などのように表計算ですむようなアプリケーションは、何も大型汎用機で、難しく開発する必要はないでしょう。CSVなどでデータを取り込んで、表計算しても充分な業務は数多くあります。百万人の顧客に関する2千行の処理が秒単位で可能であれば、まさに、これまでのコンピューティングは何だったのかという感じです。もっと、大量の処理が必要なら、複数台にロードバランスすれば良いことです。

こうしたツールが1千万円以下で入手できます。SE一人の年間経費です。最近、中央省庁のシステム更新計画を見ることがあります。どれも、メールとエクセルと簡単なフアイルがあれば済むような業務ばかりです。縦割り組織なので、業務連携がないのでしょう。PCDPの世界です。金融が当り前とするトランザクション連携やDB連携などありません。まさに大きなPCさえあれば、スタンドアロンで済むような業務特性です。入力場所が多数多様であることと、ファイルが比較的大きいというだけで、膨大なIT投資をしているようです。今回の内覧会で拝見したような高速DBエンジンや、高速表計算ツールがあれば、行政のIT予算も数分の一以下で済むように思えます。

念の為に申し沿えますと、このような技術も万能ではありません。開発ベンダーもそのことは熟知しており、むやみに売りまくろうとは考えていません。TDL社は10名程度のベンチャーです。販売体制を構築するのは、これからでしょう。それも市場の受容に合わせていくことになるでしょう。単なる情報提供の要望に応じている余裕はない筈です。ですから、敢えて、HPアドレスなどを、ここでは、お知らせしません。本当に、興味のある企業、購入意欲のある企業は、ご自分で捜して下さい。大企業の社員は、とかく天動説的な商慣習を持っています。他人の時間や、情報は無料で入手できると思っています。しかし、ベンチャーですと、社員一人一人が、自分の一秒が何円に相当するかを意識して仕事をしています。でなければ、その会社は即座に消滅してしまいます。私が、心配するのは、興味本位の問い合わせで、彼らのビジネスを阻害したくないことです。とはいえ、このような革新的技術があることも紹介させて頂きたかったのです。